小さなうつわのメッセージの「折々の記 第58号 」

折々の記第58号

ツツジのお歌

町の通りにも躑躅の木の植えてある館林に、躑躅の咲く季節に引っ越したので、躑躅と館林の事が知りたくなり、そのことが書かれている図書はないかと思い、早速館林市の図書館に行って、館林市史【館林とツツジ】という図書をお貸りしてきました。

その図書の中の「詩歌に詠まれたつつじが岡」と題されて「ツツジと短歌」「ツツジと俳句」が紹介されていました。そこに記されているツツジのお歌を詠んで、館林の地にご縁を戴いたことへの感謝のご挨拶代わりに致します。

平安時代「古典の短歌に詠まれたツツジの歌は、梅や桜や藤、山吹などの花木に比べて意外に少ない」とのことで、又、清少納言の「枕草子」の美しく趣のある花の中には、ツツジは取り上げられていないとのことですが、紫式部の「源氏物語」の「紫の上」が住む六条院の庭は、庭園の花として和歌に詠まれているとか・・・でした。

その図書の中に北原白秋の 「吾庭はみ冬ちかきに刈り込みて 躑躅のほそり日にたちにけり」というお歌を載せて「新居の庭のツツジの刈り込まれた趣の詠歌でありうるか」という文が添えてありました。

和泉式部のツツジ読めるお歌が「御拾遺集」にあると書かれていて、

岩つつじ 折もてぞ見る背子が着しくれなゐ染めの色に似たれば"

という御歌が紹介されていました。

躑躅の俳句は

  • つつじ活けてそのかげに干し鱈さく女 松尾芭蕉
  • つつじ野やあらぬところに麦畑 与謝野蕪村
  • 下り船 岩に松あり 躑躅あり 正岡子規
  • 映りたる つつじに緋鯉現れし 高浜虚子
  • 松伐りし 山のひろさや躑躅咲く 飯田蛇笏

等が紹介されていました。

こうしたお歌からも、躑躅は、日本人には 大層親しい木と思います。

私の生まれ育った家の庭にも、植木好きの父が九州から取り寄せたという躑躅が、庭を彩っていたことを思い出します。館林の私達の住むこの家の庭にも、数本の躑躅が植えられています。そして、今、花を咲かせています。

館林はツツジの名所として昔から知られているところとのこと。そのツツジの咲くつつじが丘は、「江戸期代から館林藩主をはもとより、近在から集まる里人たちの花見の地としてにぎわった。」とのことです。さらに、明治以降は多くの花見客が集まり、近年では、海外からも訪れる観光客もあり、国際化が進んでいると記されていました。

そのつつじが岡の近くにご縁を戴いて住み、主人と朝の散歩を楽しんでおります。


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